暴力団追放

指定暴力団暴力団対策法による指定暴力団の指定状況

(平成15年5月末現在)

番号 名 称 
主たる事務所の所在地 代表する者 勢力範囲 暴力団員数 初回指定年月日 効力期限(指定回数) 代紋

1 五代目山口組
兵庫県神戸市灘区篠原本町4−3−1 渡邉 芳則 1都1道2府41県 約1万7,900人 平成4年6月23日 平成16年(4回)

2 稲川会
東京都港区六本木7−8−4 稲川 角ニ 1都1道21県 約5,100人 平成4年6月23日 平成16年(4回)

3 住吉会
東京都港区赤坂6−4−21 西口 茂男 1都1道1府17県 約6,300人 平成4年6月23日 平成16年(4回)

4 四代目工藤會
福岡県北九州市小倉北区神岳1−1−12 野村 悟 3 県 約530人 平成4年6月26日 平成16年(4回)

5 三代目旭琉会
沖縄県那覇市首里石嶺町4−301−6 翁長 良宏 県 内 約270人 平成4年6月26日 平成16年(4回)

6 沖縄旭琉会
沖縄県那覇市辻2−6−19 富永 清 県 内 約410人 平成4年6月26日 平成16年(4回)

7 五代目会津小鉄会
京都府京都市下京区東高瀬川筋上ノ口上る岩滝町176−1 圖越 利次 1道1府1県 約930人 平成4年7月27日 平成16年(4回)

8 四代目共政会
広島県広島市南区仁保新町2−6−5 沖本 勲 県 内 約280人 平成4年7月27日 平成16年(4回)

9 六代目合田一家
山口県下関市竹崎町3−14−12 温井 完治 3 県 約160人 平成4年7月27日 平成16年(4回)

10 四代目小桜一家
鹿児島県鹿児島市甲突町9−1 平岡 喜榮 県 内 約120人 平成4年7月27日 平成16年(4回)

11 三代目浅野組
岡山県笠岡市笠岡615−11 串田 芳明 2 県 約130人 平成4年12月14日 平成16年(4回)

12 道仁会
福岡県久留米市通東町6−9 松尾 誠次郎 4 県 約740人 平成4年12月14日 平成16年(4回)

13 親和会
香川県高松市塩上町2−14−4 細谷 國彦 県 内 約70人 平成4年12月16日 平成16年(4回)

14 双愛会
千葉県市原市辰己台西5−9−9 申 明雨 2 県 約400人 平成4年12月24日 平成16年(4回)

15 三代目侠道会
広島県尾道市山波町3025−1 渡邊 望 6 県 約190人 平成5年3月4日 平成17年(4回)

16 太州会
福岡県田川市大字弓削田1314−1 日高 博 県 内 約140人 平成5年3月4日 平成17年(4回)

17 七代目酒梅組
大阪府大阪市中央区東心斎橋2−6−23 金 在鶴 2府2県 約210人 平成5年5月26日 平成17年(4回)

18 極東桜井總家連合会
静岡県沼津市原字東沖1767−1 芹澤 保行 6 県 約330人 平成5年7月8日 平成17年(4回)

19 極東会
東京都豊島区西池袋1−29−5 圭化 1都1道13県 約1500人 平成5年7月21日 平成17年(4回)

20 東 組
大阪府大阪市西成区山王1−11−8 岸田 清 府 内 約170人 平成5年8月4日 平成17年(4回)

21 松葉会
東京都台東区西浅草2−9−8 李 春星 1都1道8県 約1,400人 平成6年2月10日 平成18年(4回)

22 國粹会
東京都台東区千束4−3−1 工藤 和義 1都4県 約350人 平成6年5月13日 平成18年(4回)

23 中野会
大阪府大阪市天王寺区生玉町12−4 中野 太郎 1道2府6県 約140人 平成11年7月1日 平成17年(2回目)

24 二代目福博会
福岡県福岡市博多区千代5−18−15 和田 万亀男 4 県 約330人 平成12年2月10日 平成18年(2回目)

注:
1 本表に計上した数値は、最新の指定の基準日における勢力範囲、暴力団員数を示している。
2 石川一家(平成5年2月18日 佐賀県公安委員会指定)は、五代目山口組傘下組織となったため、平成7年10月16日に指定を取り消された。
3 二代目大日本平和会(平成6年4月7日 兵庫県公安委員会指定)は、再度の指定が行われず、平成9年4月6日で指定の効力が失われた。
4 三代目山野会(平成10年12月21日 熊本県公安委員会指定)は、団体の壊滅のため4回目の指定が行われず、平成13年11月8日に指定を取り消された。

暴力団追放講演会

「暴力団情勢および企業対象暴力の現状と対策」

平成15年9月18日
講師/全国暴力追放運動推進センター・中林部長
  まず、皆様方がセルメディアネットワーク協会という特定非営利活動法人を組織化し、一丸となってリスクマネジメントに取り組む姿勢に敬意を表します。というのも、組織暴力の形態は日々進化しているので、そういうリスクマネジメントを怠ると、今まで築いてきたものがまさに水の泡と消えることがあるからです。
  そうなったら、自分はもちろんのこと家族、親戚、知人にも迷惑をかけることになる。そんな事態になりかねないのが現状です。
  今、お手元に「企業対象暴力の現状と対策」と「暴力団情勢と対策」のふたつの資料があります。なぜふたつあるかというと、「企業対策──」のほうですが、ビデオショップも今は株式会社、有限会社のいずれかに法人化させていると思いますが、そうなった場合、株主総会に暴力団が入り込んでくる可能性があるからです。たとえば最近も、有名な信販会社が暴力団系の総会屋を雇い顧問料を払っていた一件がありましたよね。
  このことはみなさんにとっても、他山の石ではありません。営業活動の一環と称して、そういった連中に金を払うと、いつの日か営業活動自体が頓挫してしまいますよ。
  今の暴力団は、昔のヤクザとはイメージも実態も違います。高校時代の同級生だからいいやとか、月に2、3万なんだから払っても問題ないなんて思っていると、あとでとんでもないことになります。

 先月も、ある県のちゃんとした居酒屋さんが、私のところに相談の電話をかけてきました。今まで月2万だからいいと思って付き合っていたらしいんですが、それだけではすまず、やれパーティー券だなんだかんだと毎月10〜20万ぐらい払わざるを得ないようになったそうです。「なんとかしてください」というので、県警に電話してローラー作戦をかけてもらいました。中止命令を出して検挙してもらい、なんとかなったわけですが、暴力団との一時のつき合いに応じるとこうなるといういい例ですね。
  いずれにしても、リスクマネジメントからコンプライアンス、いわゆるきちんとした営業活動をしなければならない時代になっています。それを頭に入れてもらった上で、この講習会を意義あるものにしたいと思います。

 自分の店を守るだけでなく、自分の職域・地域から暴力団をなくそうという気持ちにまでいけば、まずもって自分の店を守ることなどは簡単です。
  私は警視庁時代に暴力団や愚連隊、総会屋にまつわる事件を多く手がけ、被害者にもたくさん会いました。暴力団の総長にも会って、彼らの本音も聞いてきました。そして4月から今のセンターにきて、被害者の声を聞きながら、全国を駆け回っています。
  そんな私の経験を元に、暴力団対策を箇条書き風に述べていきたいと思います。

・なぜ暴力団が恐いのか
  組織というものがあり、徒党を組んでいるからです。逆に考えると、これは実際に組長が言っていたんですけど、町の人たちが立ち上がって組織を作り、追放署名運動をしたら、こんなこたえることはないと。現実に、それで解散した組もありますよ。こういう例はけっこうあるんですよ。

・暴力団は1人ではなにもできない
  弱い者には徹底的に強くて、強いやつには徹底的に弱い。徒党を組む。これが暴力団の特徴です。逆に、みなさんのほうが暴力団は恐いなぁ、店に1人でいるときに来たらいやだな…などと思うと、思うつぼです。

・団結こそが力なり
「人」という字が表すように、人間は支え合って生きているわけですから、誰も1人では生きていけない。たとえば、儲かってきて有頂天になって、1人でなんでもやれると思っているような人は、人間の道理を忘れた人ですね。そういう人には団結こそが力なりをわかってほしいです。
  その点、セルメディアネットワーク協会のみなさんは、こうして集まって勉強しているわけですから、正しい道に進んでいけると思います。私の長い経験からしてもそう判断できます。

 今度は、逆に暴力団の側からの話をします。

・恐怖感を利用している
  彼らはみなさんの恐怖感を利用して商売しています。設備投資もなにもしていない、演技力のある騙し屋なんです。本当に恐ろしいなと思う場面は、実は“演技”なんです。脅しのうまいやつは騙しもうまい、それだけだと思ってください。
  みなさんは変に頭がよすぎて、恐怖心を膨張させてしまうけど、それは幻影です。そういう心理状態に暴力団がつけ込んでくるんですね。

・とりやすいところからとる
  もうひとつ、暴力団は獲物がかかりやすいところからどんどんとっていく。逆にいえば、とりやすくしなければいい。それから、彼らは収穫の多いところを狙う。一度の行動で多くとれるところを狙うんです。要はローリスク・ハイリターンですね。

・金のための組織である
  彼らは殺し屋ではありません。たしかに町で銃弾を飛び交わしたりもしているけど、あれはみなさんに向けているわけではありません。他の暴力団に縄張りをあらされてはたまらないから、しかたなしに抗争をやってるんです。
  そういうことでローリスク・ハイリターンの詐欺師、金のための騙し屋商売にすぎないんです。

・権力にはきわめて弱い
  警察につかまりそうになると、逃げ足がすごく速くなる。これは最近のデータから見ても明らかなことです。
  だから警察を信じ、なにかあったら、早めに相談してください。連中とて、刑務所に1ヶ月でも入ったらおしまいですから。1ヶ月ぐらい食らってもたいしたことはないと口では言っていたとしても、実際はたいへんな痛手になりますので。
  不当要求を断ったからといって、命をとられるわけでもないし、傷つけられるわけでもない。堂々と110番通報すれば、すぐに逃げてしまいますよ。
  みなさんも、暴力団に関する体験は少なからずあると思いますが、正しく理解して今までの無念さ・怒りを、今こそ力に変えてほしいと思います。

・防犯は掃除をすることから
  経営努力という言葉がありますが、そのためには営業方針をしっかりさせることです。ただ、だらだら商売をしていてもビジネスは成り立ちませんよね。店作りの姿勢をきちんと立てて、悪いことは許さないという態度をもって臨むことが大切だと思います。
  犯罪に備えて、私がよく言うのは、まずは掃除をしなさいと。お客さんに対して間合いをしっかりとりなさい。出入り口を大事にしなさい。こういうことを常に指導しています。

・地域防犯の基本とは
  9月6日(土)の読売新聞の東京版にも、防犯はまず掃除から──と書いてありました。まずは店内の整理整頓、自分の店舗の周りの掃除、これを従業員にやらせるか、自ら率先してやる。この姿勢が大事です。暴力団も、そういう姿勢を見るならば、つまらない脅しをしたり、傷つけるようなことは絶対にできません。
  これは、私が組織の上層部からチンピラまで全部調べて知ったのですが、彼らは必ず言いますよ、「きちんとした店舗だと、入店してもなにもせずに帰ってしまう」と。
  また、掃除をすると、まわりのお店とのコミュニケーションにもなりますね。周りのお店が掃除をしていなかったら、代わりにやってあげる。こういうことが地域のつながりをよくし、地域防犯の基本になります。

・断る勇気を身につけよ
  もうすでに1回、暴力団と付き合っちゃったという人もいると思います。それならば、いかなるタイミングで手を切るか──。
  こういう人への対処も、私は警視庁時代からやっていました。特にトップ企業の経営者は世間体を重んじるだけに、表ざたになることに対して抵抗があるようですが、私は徹底的に関係を切らせてきました。いずれにしても、あいまいにならない営業方針の充実が必要ですね。断る能力も身につけてほしいです。商売で成功するにはそういうことも大切ですからね。
  これはなにも、暴力団相手のことばかりではありません。すべて、断る勇気は大切です。110番をかける以前のところできちんと断ってしまえば、これは最高の断り方です。現実、みなさんと同じ業種の商売をしている人で、そういう人がいましたよ。
  警察に頼るのもいいのですが、皆さんの自助努力があって警察は近づいてきます。そこをぜひ自己研鑽する、またはこういう勉強会で積み重ねてください。

◆暴力団の特徴的傾向
  これ以降は今日のテキスト「暴力団情勢と対策」を元に、かいつまんで申し上げていきます。最近の暴力団の特徴は、構成員を少なくして、準構成員を多くしてきています。これは法整備が進み、指定暴力団の構成員だと挙げられてしまうということでこうなっています。ちなみに、全国8万5300のうち、約7割が指定暴力団にかけられ、法の縛りにかけられています。
  暴対法ができてから歴然としてきたのは、暴力団のなかでも金儲けがうまいやつ、悪いことに長けているやつが相当力を蓄えて、勢力を伸ばしています。片や、やり方が下手なやつ、または親分が死んじゃったなどの場合は、今までのような勢力を保てないということで組を解散させた例もあります。こうして暴力団勢力図の内部の動きが激しくなり、寡占化が進んでいます。要するに山口組、住吉会、稲川会ですね。これだけでだいたい全体の7割を占めています。
  資金がある者はある者で、金を投下して、さらに儲けようとしています。よく知られている例では、闇金融の業界に進出していますね。あるいは、みなさんの業界に進出していることもあるかもしれない。
  では、ない者はどうするか。もうなりふりかまわなくなる。騙す、脅す、凶悪犯罪もいとわない。これがぎりぎりのところにまでいくと、九州・小倉のような事件になってしまいます。小倉の件は新聞にも出ていたと思いますが、今は県警が大々的に取り締まって、参加者が1000人を超える住民の決起大会も開催されました。小倉の事件を起こした暴力団は、暴力団のなかでも特に悪い組織ですね。ああいう事件は、組織の末期現象に起きる事件なんです。たぶん、破門寸前の組員が起こしたものでしょう。
  このように金のある者とない者がはっきりしてきている。そしてある者はある者で、弱肉強食の原理でまた太っていきますから、今度は内紛が起きますね。内紛が起きると、組同士の抗争に発展すると。こういうことです。

◆不透明化する暴力団の実態
  もうひとつ、知っておいてもらいたいのは、不透明化する暴力団の実態です。言うなれば、傀儡(かいらい)を立てて活動する方法です。たとえば、高校時代の同級生などを使って食い込んでくることもあります。気がついたら、背後に暴力団がいるとわかったと。初めから暴力団だと言って、表立って活動すると、すぐに警察に捕まってしまう。だから、最初はちょっとした人間関係から始まって、そのときに近づきやすい都合のいい姿でやってくるわけです。場合によっては右翼団体を投入してくる場合もあるでしょう。やがて、暴力団がやってくる、機関紙を買ってくれよなどとね。
  こういった都合のいい姿でくるのが特徴です。なかには、暴力団とはまったく関係のないならず者が、なにかに付け込んでやってくることもあるでしょう。そういうときでも、警察やセンターにどんどん相談してください。明らかに暴力団だとわかる例は、今は少なくなっていますので。
  反対に、暴力団の縄張り内で、みかじめ料を要求してきたり、ちょっとした物品の購入に付き合ってくれよと、言ってくることがありますが、こういう場合は地元の暴力団の名前をかたり名刺ももってくることが多いですね。こういう場合は“料理”しやすいんです。今日の研修に基づいて自助努力をすれば、こういうことには対処できると思います。つまり、きちんとした断りを入れ、もらった名刺をもって県警に相談に行くということですね。その間に言いがかりをつけられたりすれば、これは恐喝未遂になります。
  いずれにしても、今の暴力団は不透明化していることを頭に入れておいてください。

◆資金獲得活動を多様化させる暴力団
  あとは資金源活動のパターンが多様化していることも、特徴としてあげられます。極端なことをいえば、路上を歩いている人すべてから金をとろうとしている。たとえば、暴力団の予備軍が新聞配達員、宅配ピザの配達員から釣り銭を奪ったり、ポスティングの際に言いがかりをつけたりする。それどころか、クリーニング店や花屋さん、そば屋さんのようなところも被害に遭っていいます。すぐに捕まってはまずいから、ウーロン茶のようなものを納品して月に3万円とるとか。そういう営業活動が増えてきて、暴力団の資金獲得活動の幅は手広くなってきています。

◆国際化が進む暴力団
  その他に、国際化も進んでいます。今、不法に入国した中国人が増えていますね。いわゆる日本語学校に入学するために来日した就学生。あれは正規の学生ではないんです。日本語学校に通うと言わないと入国できないから、就学生ビザで来日するんですね。そうした中国人による犯罪が増えています。
  日本の暴力団員が直接恐喝などをやると懲役になっちゃいますから、中国人にやらせる。特に強盗がそうですね。ここに金があり、この時間帯に入れと、ネタを提供するのは日本人の暴力団、実行するのは中国人。で、中国人は言われた通りにやるんですね。分け前はというと、日本の暴力団が3〜4割、中国人が6〜7割なんです。
  泥棒や強盗は、暴力団とは別だろうなんて思っていたら大間違い。自分では手を出さず、人にやらせるという、非常に卑怯な手を使っているんです。
  中国人はなぜ使われているかというと、逃げ足が速いからです。逃げ切って捕まらないやつらは多くいますよ。そういう仕組みです。

◆暴力団による銃器発砲事件
  銃器発砲事件は、金のため利権を死守するために仕方なくやっています。その拳銃は一般市民に向けているものではありません。銃撃事件をもって、暴力団に対する恐怖感を増大させているとしたら、これも大きな間違いです。

「暴力団総合対策の推進」
  警察が暴力団を逮捕した端緒の8割が、市民からの通報です。私も警察にいた頃、大きな事件を扱いましたが、それもやはり端緒は相談です。その相談も、オーナーとか管理職の人ではなく、末端で働き暴力団と対峙している店員からです。だから、店員の悩みをオーナが吸い上げて対処していくのがいいですね。ただ暴力団を避けろとばかり言っていても意味がありません。要は店舗内の相談体制を確立することが大切ですね。それで解決しなければ警察に行くなり、こういう(セルメディアネットワーク)協会に相談するなりしたほうがいいでしょう。それにより、目が研ぎ澄まされていく。こういうのが端緒になって暴力団を追い出していけるんです。
  やつらはカビと同じなんです。カビを生えさせる土壌を消毒しなくてはならない。そのためには、住民や職員、業界からの排除運動が必要です。みなさんの研ぎ澄まされた目と、草の根活動、こういうことが暴力団排除の基本になります。

 アメリカやイタリアにはマフィアの問題がありますが、排除するためになにをやったかというと、FBIも取締りもやりましたが、やはり住民運動が決め手となったようです。警察が捕まえても、ばい菌と同じようにまたどんどん湧いてくる、業界の土壌が腐っていたら、業界全体をきれいにする必要があります。
  あとは、覚醒剤取締法など、いろいろと法律的な運用もありますが、それも通報に始まることが多いです。そういう目で見ていると、店員が変な輩に引っかからなくなります。
  逮捕のきっかけとなる通報も、その気になって見ていないと気がつきません。暴力団から逃げている状態ではわからないものです。そうした感覚を養うようにしてください。

「暴力団対策の効果的運用について」
◎15の禁止行為
  指定暴力団に関しては、法律で定められている15の行為をすると中止命令が下されます。脅しをせずに、ニコニコと笑いながら近づいてきても、行為によっては中止命令になります。そのなかでもいちばん多いのは、不当要求です。お金を要求してくる行為、または物を買えといってくること。あるいはみかじめ料の要求もそうですね。
  よく言う用心棒代は一種の契約行為みたいなものですね。このお店の何時から何時まで見張りをするというように。これも禁止行為です。
  花やウーロン茶、トイレの臭い取りなど若干の対価性のある物をもってきて、勝手に置いていって、あとで金をとるケースもあります。ボーとしていると、こういう目に遭うことがあります。もちろん、警察に相談に行けばいいのですが、置いていったものはしょうがないと付き合うと、あとでひどい目に遭いますよ。仮に置いていかれても、あとできちんと返せばいいんです。
  これら15の行為のなかで、皆様方に関係しそうなのは4番と5番でしょう(「縄張り内の営業者にあいさつ料を要求する行為」「縄張り内の営業者に用心棒代、入場券等の購入等を要求する行為」)。あるいは1番(人の弱みをネタに口止め料を要求する行為)、2番(寄付金、援助金等を要求する行為)もあるかもしれません。あと、15番(商品の欠陥などをネタに損害賠償、購入した有価証券に因縁を付けた損失補てんを要求する行為)にも気をつけてください。
  これら15の行為以外でも、不当行為的な要求をされたら、きちんとメモをとるなどして、相談の体制を整えてください。

◎情報交換の重要性
  暴力団がらみの体験をしている人と、まったく体験していない人との間にはかなりの差があるようです。今は、ピッキングだサムターン回しだと、部屋にいくら鍵をかけても泥棒に入られる時代ですね。それと同じで、無防備こそ恐いものはない。今日の研修で、暴力団やその他不当要求集団に対して、少なからずとも関心をもった人は、必ず対策をとってください。こうした防備は営業上も重要ですから。体験によって、そういった気持ちをもつかもたないかの差があるようです。
  これは人間の弱点でもあるんです。体験したことに対しては強いのだけど、体験していないと、つい人ごとだと思ってしまう。今後こういった研修会をやる場合は、体験された方の経験談を事務局を通して反映させ、事務局で事例集を用意するとか、会員同士で情報交換をすることも大切でしょう。情報というのは、一方的に受けるだけではダメなんですね。自分からも情報を発しないといけません。私の今日の講演会が、そのためのたたき台になれば幸いです。

「暴力団排除活動の推進」
◎排除する姿勢
  何度も言いますが、暴力団なんて徒党を組んでいなければなにもできない弱虫なんだから、とにかく暴力団を恐れないこと。このことを踏まえた上で、金を出さないようにしてください。
  金を出す人がいるから、暴力団がはびこるんです。暴力団に金を流している人のことがわかると、それをきっかけに暴力団同士の抗争が起きて、市民が流れ弾に当たったと。万が一、こんなことが起きると、きっかけを作った人に民事的な責任が生じる可能性もありますよ。そのくらい、金を出すことは大きな問題に発展することがあるんです。資金提供はけっしてしない、それから暴力団を利用しない。今は不況だから、暴力団のセールスも巧みですから、そんな気持ちでいると、知らず知らずのうちに彼らのペースに巻き込まれてしまうんですね。
  以上を徹底して肝に銘じてください。

◎組事務所撤去活動の推進
  警察では、事務所撤去活動として事務所の使用停止、その他にも葬儀や襲名披露などで公共施設を使用させないなどの活動も行っています。これを暴力団の義理かけ(襲名披露・葬儀等)規制といいます。義理かけの会場が、暴力団同士の抗争の戦場にもなりかねないということで、こうした活動をやっております。

◎地域職域からの暴力団排除活動の推進
  警察の取締りに合わせて、地域職域からも暴力団の排除意識を盛り上げることが肝心です。

◎少年を暴力団から守る活動
  暴走族の少年が万引きをする、引ったくりをする、あるいは恐喝をするのはなぜかというと、結局背後で暴力団が面倒をみているからです。得たお金で少年は暴力団に上納金を納め、いい格好をしている。少年はいい格好しているつもりなんだけど、暴力団の庇護の元でそうしているに過ぎない。これは言うなれば、暴走族の暴力団予備軍化です。

◎各業種からの暴力団排除活動
  今は、たとえば産廃業者、建設業者、貸金業には、暴力団はなれないようになっています。その他にも、いわゆる債権取立てなどもそうです。こういう法律ができていないみなさんの業界も、排除するという姿勢は同じですね。ぜひ、業界から暴力団を排除しようという目と力を養っていただければありがたいと思います。

◎暴力団を相手方とする民事訴訟
  センターでは予算をとり、こういう支援をする体制ができています。また、使用者責任として、組員が起こした事件に対する、組長への突き上げ裁判の支援もしています。

「都道府県暴力追放運動推進センターの活動」
◎相談の受け付け
  電話での相談はもちろん、メールでも相談を受け付けています。特に、メールでの相談は正確で、これにより摘発に至った事例は多々あります。その他、センターでは資料、ポスター、「排除宣言の店」などというステッカーも作っております。

◎責任者講習の開催
  都道府県公安委員会から委託を受けて、「不当要求防止責任者講習」というのを開催しております。これは企業の事業所長になる人には、必須の事項といえるでしょう。センターで随時開催していますので、ぜひ店長さんに受講させてください。
  暴力団とは何ぞや、暴力団に対処するにはどうしたらいいのかなど、対応要領をビデオ教材も使って学習します。講習時間は4時間に及びますが、受けた人はみんな受講してよかったと言っております。今は希望者も多く、待たされることもありますが、計画を立ててぜひ参加してください。
  できれば、店長には必ず講習会を受けさせるなど、事業計画の一環として位置づけてほしいですね。修了者には受講修了書とステッカーが授与されます。

 講習のもうひとつの利点は、「こんなことで相談するのはちょっと…」とためらわれるようなことでも、最後にアンケートがあるので、そこに相談事を書くことができます。そのアンケート結果をセンターと警察が活用し、今後に生かします。だから、講習は受身じゃないんです。いわば受けながら攻める。受講しながら頭に浮かんだ対策をメモして対応を考え、警察やセンターにこういうことをやってもらいたいという要望をどんどんぶつけてもらいたいです。
  道路交通法では、車を何台か以上もっている事業所の所長は、安全管理講習を受けることを義務づけていますね。それ以上に、私はこの暴力団対策の講習は必要性があると思います。今は不況だし、暴力団の策略も巧妙化していますし、暴力団でない者が暴力団を騙って凶悪事件を起こしたりしていますので。
  こういうことから身を守るためにも、講習を受けておかなければならないということで、ほとんどの企業が受けていますよ。
  今日のこの研修会も、同じ意味ですばらしいものですね。今後、いろいろと名称を変えて、暴力団対策の勉強会を続けてほしいと思います。

「暴力団員等に対する基本対応要領15か条」
  なぜ“等”なのか──。暴力団といっても、今は不透明化しているので、右翼団体かと思っていたら、実は暴力団だったりする。あるいは同和団体、または環境団体、ときには青少年育成協議会などと、もっともらしい名前を使うこともあるんですよ。近寄りやすい名前を使ってくるんです。こういう不当要求集団、反社会的分子も対象にするということで、暴力団員等と呼んでおります。

☆来訪者のチェックと連絡
  具体的な対応要領としては、来訪者のチェック体制。出入り口を明るくするとか、入ってきた人数を把握するとか、こういうことが大事なことだと思います。

☆相手と用件の確認/・言動に注意する
  相手の確認と用件の確認をする、言動に注意するなどもあげられます。出会い頭の言い争いになってしまうと、「なにをコノヤロー!」とけんか腰になる場合があります。

☆書類への署名押印
  書類関係はやたらと署名捺印しないことです。民事裁判上、脅迫されて書いた書類なら、裁判で勝てますが、騙されて書いた書類は、裁判でみなさんが負けてしまうことがあります。むやみに書類を書かないようにしてください。

☆即答や約束はしない
  即答や中途半端な答えは禁物です。これは仕事に対する真剣味が足りないということなんです。まあいいやと、その場逃れの適当な返事をしてしまうと、あとで最悪、凶悪犯罪につながることもありますから。

☆記録をとる
  記録をとることも重要です。なにもテープに録音することはありません。営業日報の予備欄にでも書いておき、それが積み重なっていけば、りっぱな証拠になります。
  私が扱った件で、ものすごく脅しのうまいエセ同和集団の事件があるんですが、記録に見ると、彼らは非常に長けていて、ここは警察に通報されるなという時点になると、あまり強いことは言わないんですね。そうしたやり方で、全部で100億円近く恐喝していました。その集団も、暴力団対策ができているような雰囲気の店では絶対にやらないんです。いずれにしろ記録をとり、機を逸せずに警察に通報することが大切ですね。
  本日学んだことを生かして、今後の対策に役立ててください。

――Q&A――

Q:捨て看板を出したところ、暴力団から「じゃまだ」とか「場所代を出せ」とか言われたことがあります。こちらにも落ち度があるので、警察には通報しにくいのですが、どうすればいいんでしょうか?

A:いい質問ですね。法に触れる行為を見届けたうえで因縁をつけるのは、まさに彼らの常套手段です。よくある例では、道路不正使用として因縁をつけることがあります。警察官が注意するのならまだしも、やくざ者がどうこう言う問題ではありません。
  貼ってはいけない広告を貼ってしまったのが事実だとしても、だからといって暴力団にあやまる必要はありません。「ご指摘ありがとうございます。(捨て看板を出してしまったことに対して)警察に行って始末書を書きます」──。こう宣言すればいいんです。
  ここにも経営者の姿勢が出ますね。捨て看板で悪いことしちゃったからしょうがないやと思わずに、悪いことは悪いことで(警察に)認め、対応していかないと、とことんしゃぶられますから。
  また、不正的なことをやらない土壌を作っていくという、業界の方針も大切ですね。

Q:通報をしたら、お礼参りを受けるんじゃないかと心配しているんですけど、その実態はどうなっていますか? また、お礼参りをされない具体的な対策はありますか?
A:具体的になにかされる場合は、1回付き合ってしまって、途中から断るような場合です。中途半端なことをやるとこうなります。きちんと対応して、警察に届出をした上で、それでもお礼参りをされるなどということはありません。
  彼らがなぜお礼参りをやるかというと、警察が知らない分野でなにかあって、それに対してやるわけです。逆にいえば、警察やセンターにすべてを話して対応していれば、お礼参りなどされるわけがありません。

Q:福岡県で、暴力団追放運動をしていた店舗経営者が殺された事件が起きましたが…。
A:暴力団のなかにも、特に凶悪な集団がいます。まずは土地柄、気質などをよく判断すること。指定暴力団のリストは資料に載っていますし、県のセンターに事前相談に行くのもいいでしょう。

Q:過去に何回か、店にやくざがきました。しかし、名刺はくれません。見た目はやくざそのものでしたが、名前もわからない相手のことをどう相談したらよいのでしょうか? 「警察に通報するぞ」というべきなのでしょうか?

A:まずは名前と団体名を聞くことです。それから、「通報する」というのは抑止にはなりますが、相手にもよります。ケースバイケースですね。基本的に言えていることは、そのとき店にいた店員1人に責任を負わせないことです。店舗全体で組織対応をすることですね。

暴力追放運動推進センター一覧表

都道府県 組織名 住所 電話番号
全国

全国暴力追放運動推進センター

〒102-0094
千代田区紀尾井町3-29紀尾井町福田ビル内
03-3288-2424
北海道 北海道暴力追放センター 〒060-0003
札幌市中央区北3条西18丁目道庁西18丁目別館内
011-614-5982
青森県 暴力追放青森県民会議 〒030-0801
青森市新町2-2-7青銀新町ビル内
017-723-8930
岩手県 岩手県暴力団追放県民会議 〒020-0022
盛岡市大通り1−2−1県産業会館サンビル内
019-624-8930
宮城県 暴力団追放宮城県民会議 〒980-0014
仙台市青葉区本町3-5-22宮城県管工事会館内
022-215-5050
秋田県 暴力団壊滅秋田県民会議 〒010-0922
秋田市旭北栄町1-5秋田県社会福祉会館内
018-824-8989
山形県 山形県暴力追放運動推進センター 〒990-0041
山形市緑町1-9-30
023-633-8930
福島県 暴力団根絶福島県民会議 〒960-8065
福島市杉妻町5-75県庁東分庁舎内
024-523-3724
茨城県 茨城県暴力追放推進センター 〒310-0062
水戸市大町2-2-6第一生命ビル内
029-228-0893
栃木県 栃木県暴力追放県民センター 〒320-0024
宇都宮市栄町5-7栃木県栄町別館内
028-627-2995
群馬県 群馬県暴力追放県民会議 〒371-0836
前橋市江田町448-11県警本部江田町庁舎内
027-254-1100
埼玉県 埼玉県暴力追放薬物乱用防止センター 〒366-8533
さいたま市浦和区高砂3-15-1県庁第2庁舎内
048-834-2140
千葉県 千葉県暴力団追放県民会議 〒260-0013
千葉市中央区中央4-13-7千葉県酒造会館内
043-254-8930
東京都 暴力団追放運動推進都民センター 〒101-0047
千代田区内神田1-1-5
03-3201-2424
神奈川県 神奈川県暴力追放推進センター 〒231-0002
横浜市中区海岸通2-4県警本部庁舎内
045-201-8930
新潟県 新潟県暴力追放運動推進センター 〒950-0981
新潟市堀之内32鳥屋野農協ビル内
025-241-8119
山梨県 山梨県暴力追放県民会議 〒400-0031
甲府市丸の内1-5-4恩賜林記念館内
055-227-5420
長野県 長野県暴力追放県民センター 〒380-8510
長野市大字南長野字幅下692-2県庁舎内
026-235-2140
静岡県 静岡県暴力追放運動推進センター 〒422-8067
静岡市南町11-1静銀・中京銀静岡駅南ビル内
054-283-8930
富山県 富山県暴力追放運動推進センター 〒930-0005
富山市新桜町3-2
076-431-8930
石川県 暴力団追放石川県民会議 〒920-0962
金沢市広坂2-1-1石川県広坂庁舎2号館内
076-260-8930
福井県 暴力団追放福井県民会議 〒910-0003
福井市松本3-16-10県庁合同庁舎内
0776-28-1700
岐阜県 岐阜県暴力追放推進センター 〒500-8175
岐阜市薮田南5-14-1
058-277-1613
愛知県 暴力追放愛知県民会議 〒460-0001
名古屋市中区三の丸2-1-1
052-953-3000
三重県 暴力追放三重県民センター 〒514-0004
津市栄町3−222ソシアビル内
059-229-2140
滋賀県 暴力団追放滋賀県民会議 〒520-0044
大津市京町3-4-22滋賀会館内
077-525-8930
京都府 京都府暴力追放運動推進センター 〒602-8027
京都市上京区下立売通衣棚西入東立売町199-6
075-451-8930
大阪府 大阪府暴力追放推進センター 〒540-0012
大阪市中央区谷町2-3-1ターネンビル2内
06-6946-8930
兵庫県 暴力団追放兵庫県民センター 〒650-8510
神戸市中央区下山手通5-4-1県警本部庁舎内
078-362-8930
奈良県 奈良県暴力団追放県民センター 〒630-8131
奈良市大森町57-3奈良県農協会館内
0742-24-0102
和歌山県 和歌山県暴力団追放県民センター 〒640-8150
和歌山市十三番丁30番地酒直ビル内
073-422-8930
鳥取県 暴力追放鳥取県民会議 〒680-0031
鳥取市本町3-102鳥取商工会議所内
0857-21-6413
島根県 島根県暴力追放県民センター 〒690-0887
松江市殿町2番地県庁第二庁舎内
0852-21-8938
岡山県 岡山県暴力追放運動推進センター 〒700-0985
岡山市厚生町3-1-15岡山商工会議所ビル内
086-233-2140
広島県 暴力追放広島県民会議 〒730-0011
広島市中区基町10-30農林庁舎内
082-511-0110
山口県 山口県暴力追放県民会議 〒753-0072
山口市大手町2-40県警本部別館内
083-923-8930
徳島県 徳島県暴力追放県民センター 〒770-0939
徳島市かちどき橋3-1
088-656-2710
香川県 香川県暴力追放運動推進センター 〒760-0026
高松市磨屋町5-9プラタ59ビル内
087-837-8889
愛媛県 愛媛県暴力追放推進センター 〒790-0808
松山市若草町7県警第二庁舎内
089-932-1893
高知県 暴力追放高知県民センター 〒780-0870
高知市本町3-6-37中島町ビル内
088-871-0002
福岡県 福岡県暴力追放運動推進センター 〒812-0046
福岡市博多区吉塚本町13-50県吉塚合同庁舎内
092-651-8938
佐賀県 佐賀県暴力追放運動推進センター 〒840-0831
佐賀市松原1-1-1警察本部別館内
0952-23-9110
長崎県 長崎県暴力団追放県民会議 〒850-0033
長崎市万才町5-24ヒルサイド5ビル内
095-825-0893
熊本県 熊本県暴力追放協議会 〒862-0950
熊本市水前寺6-35-4
096-382-0333
大分県 暴力追放大分県民会議 〒870-0046
大分市荷揚町5-36大分県警察本部庁舎別館内
097-538-4704
宮崎県 宮崎県暴力追放県民会議 〒880-0801
宮崎市宮田町13番16号県庁北別館内
0985-31-0893
鹿児島県 鹿児島県暴力追放県民会議 〒892-0838
鹿児島市新屋敷町16-301県公社ビル内
099-224-8602
沖縄県 暴力団追放沖縄県民会議 〒900-0021
那覇市泉崎1-2-2沖縄県警察本部庁舎内
098-868-0893